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「企業の農業参入」。 もともとその土地にいた農家は…?

「企業の農業参入」。 もともとその土地にいた農家は…?_c0110869_18443670.jpg

イオン農業プロジェクトという動きが、
茨城県牛久市でスタートしている。
イオンアグリ創造株式会社という、イオンの子会社。

2.6haの耕作放棄地を開墾するところから始まって、
3年後には、15haまで拡大する予定だそうな。

私は見ていなかったのだけど、
NHK クローズアップ現代の中の話では、
イオンは今後、全国8ケ所でこの牛久パターンを展開する予定らしい。
(参考:こちら

その候補地のなかのひとつが、ここ立科町にある。
まさに、私たちが就農しようとしている美上下(びじょうげ)地区だ。

美上下は、高原レタスの産地として、かつてはたくさんの農家が稼いでいた。
いまでは、高齢化などで離農が進み、荒れているところもかなりある。
けれども、まだ3軒の農家が専業として頑張っていて、
私たちが入れば、形態は違えど4軒目ということになる。
(↓へ続く)



今日の立科町
晴れ
最低-3℃  最高16℃ 






私たちがいま、口約束の契約でお借りしている畑は、
いわくつきの耕作放棄地と隣り合わせ。
2007年、産廃処理施設の建設計画が大反対を受けて中止になったことから、
町が保有、管理しているような感じ。
(参考:こちら

ところが、「市町村は農地の所有権を得ることができない」(農地法3条2項2号の2)。
よって、町としては、公にならないうちにここを手放したいらしいのだ。
なので、町にとってはイオン様様だろう。
ついでに、やっかいな遊休農地の問題も一気に解消してくれるんだもの。


先日、イオンによる美上下の住民への説明会があったようで、
参加したおばちゃんからの報告によると、

・後継ぎがいなくて余ってる畑を使ってくれる
・今いる3軒の農家で出た「はぶき」(=規格外白菜とか)もカット販売してくれるらしい
・引退した独り者のおばあちゃんたちも雇ってくれるかも

という、マイルドで口当たりのいい説明だったらしい。
もちろん、おばちゃんたちにも好印象で、反対運動なんてありえない。



昨年(2009年)の11/25の日記でも少し触れたんだけど、
この話は、畑を紹介してくれた農地コーディネーターも知らなくて、
私たちのハウスがやっと完成して、家も決まった!という時期に初めて知ったことだ。
どうも、畑の地主さんは最初から知っていたようで、
だから私たちは1年限定の仮契約しかしてもらえなかったのかもしれない。

この畑がダメだったとしても、まだこの美上下地区には空いてる畑があるし、
いざとなったらそっちへ移る覚悟で、了解はしていた。


ところが、やっぱり大企業、そんな甘っちょろいレベルではないらしい。
その、私たちの第二希望として考えていた畑までひっくるめて、
美上下全体をイオンの農場として押さえることになるだろう、とのこと。

その巨大農場の中に個人の農家が存在できるはずもなく、
いまいる3軒の農家も、イオンの従業員になるか、
委託栽培みたいなかたちになるかもしれない、とのこと。

それどころか、美上下にとどまらず、ふもとの集落の田んぼにまで及ぶ可能性もあるという。
それじゃ、立科町、完全にイオンにおんぶされちゃうのね。
どこまでが噂で、どこまでがホントの話か分からないけど。

トヨタのおかげでものすっごく肥えていた、愛知のどこかの市町村を思い出す。
いまはどうなっちゃってるんだろ。



農地を探し回っている新規就農者がたくさんいる。
半自給的な「農」を、別の仕事と両立させている人も増えている。
農村カフェだとか、農家レストランをしたくて、物件を探している人もいる。
引退後、菜園のある田舎暮らしをしたい人もいる。
おとなり佐久市のクラインガルデンなんて、待機が200人以上。


都会には、こういう人たちがたくさんいるのに、
なんで、田舎の市町村は、遊休農地や空き家の情報を真剣にまとめないんだろう。
都会出身の私から見たら、こんなにいいところ、宝の山だ。
普及センターも農政課も農協も、バラバラにしか情報を把握してないのが、
とってもとっても歯がゆい。
そもそも、窓口が一本化されていないところからして疑問。

遊休農地、担い手不足、大変大変~といいながら、
私有地には関わりたくない、人任せ、企業任せの姿勢が見え見えだ。
助成金、支度金を用意して新規就農者を誘い込んだって、
情報がオープンになっていなければ、意味がない。

お金も助かるけれど、求めているのはお金より情報だ。


表向きは「遊休農地の活用」。
でも、新たな若手移住者への道を切り開かず、企業参入に頼ったところで、
担い手不足の問題は解決するの?
農業の高齢化は解決するの?
持続可能な未来型農業って言えるの?
夢のある未来へ…ですか?

イオンは、農業参入によって、「野菜・市価の2~3割安を目指す」って。
(参考:こちら
結局は、価格競争に勝ちたいからだよね。
地域の活性化なんて、知ったこっちゃないだろう。


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ここまでは、「こんな話が上がってる」と担当者から聞いたこと。
で、今後の話。

土質や日当たりにこだわらなければ、
遠くないとこでも、空いてる農地はたくさんある。

多品目栽培をあきらめれば、楽になれるのかもしれない。

いっそ、ふもとの粘土質の畑で小麦農家になってパンでも売るか、と
逃げ道も考えたりしたけれど、
そもそも、自分たちの就農の動機はそこではない。

まず、美味しくて健康的な野菜が、
特定の人だけのものではなく、
もっと一般庶民にも当たり前の選択肢であって欲しいと。
何より、子供の口に入って欲しいと。
そのために自分ができること、作る側になろうじゃないかと。

そして、大前提として、多品目の野菜を栽培することで、
土の微生物層を豊かにするような農業をしたいと考えていたのだ。

そんな自分の中の芯がぶれたまま、妥協案で就農しちゃったら、
農作業のモチベーションが全然違ってくるだろうし、
なにか困難にぶち当たったときに、乗り越えられないような気もする。



1年後に追い出されるのか、3年後に追い出されるのか、
正直、まだはっきりとは分かっていない。

そして、はっきりと分かる時が来たら、
その時はもう、上からの決定が伝わるだけのことであって、
こちらが何を言っても、決定は決定なのだろう。
だいたい、決定権のある権力者ってのは、目先の利益を優先するものだ。

こんな不安定な状況だけど、
1年間は、ここでできる限りの技術を身につけようと思う。
美味しい野菜を作れそうな自信があるかないかで、
その後の転がり方も違ってくるだろうしね。



by motoarai | 2010-02-24 18:43 | 畑しごと
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